「知」に関する小論文(早稲田大学高等学院H24) 解答

「知」に関する小論文(早稲田大学高等学院H24)の模範解答を以下に掲載いたします。

問 この文章の筆者である哲学者の黒崎政男氏によれば、現代は<知>が情報化される時代であるという。ここでの<知>とは、知識・知恵などの知的行動のことであるが、テレビやインターネットなどが広く普及した情報化時代に、今後のあなたはどのような<知>をもって生き抜こうと考えますか。なぜそのように考えるのか明確な理由を示し、課題文の内容をふまえて、901字以上1200字以内で、あなたの考えを述べなさい。(問題文は著作権の関係上省略いたします。)

 かつて知識とは時間が経過してもその価値が減少しにくいものであると考えられていた。しかし、今日の変動の激しい社会において必要とされる知識とは、これまでの時間の経過に耐えうるような知識ではなく、ある状況では極めて価値のあるものではあるが、その状況が終わると途端に価値がなくなるようなものである。これが本文における<知>の情報化であるが、個人の生き方として、この<知>の情報化という、時勢に合わせてその時々で必要とされる情報のような知識だけを集めていくことが果たして妥当なのか考える必要がある。

 たしかに、習熟や熟練といった知的活動は現代社会においては軽視されている。いや、軽視されるというよりは、危険視されているといったほうが良いかもしれない。なぜなら、何か一つに打ち込むということは他の多くを捨てるということであり、自分の人生を賭けたその対象が時代の流れの中で価値のないものとなったとき、社会からはじき出されてしまう危険があるからである。したがって、時流に合わせて、特定の状況で多大な利益を生み出すような情報としての知識を得ることにまい進したほうが賢いということになる。そして、このような知的活動を支えているものがテレビやインターネットといったマスメディアである。現代社会において携帯電話やパソコンといった機器が必要不可欠といわれるのは、情報としての知識を集めることが知的活動とみなされているからである。しかし、このような知的活動を続けていると結局、通俗的な生き方しかできなくなるのではないか。むしろ、変化の激しい時代だからこそ、習熟や熟練といった知的活動を土台として、自分の存在意義を確立しなければならないと思うのである。そして、真に知的な生き方とは、他者との関係で生まれる葛藤や苦悩をところにあると思われる。、喜びを分かち合ったり様々な価値観をもつ人たちと先述の人間的な魅力を感じる人が行っている知的活動にあると思われる。すなわち、人とつながろうとする意志と行動にある。具体的に言えば、本を読んで先人がするやはり自分の頭で考え抜くかつての知的活動にあると思われる。世間に出回っている情報を集めるだけでは、結局通俗的な生き方しか出来ない。ただし、目まぐるしく変動する現代社会の現象一つ一つを自分の頭で考え抜くのは不可能であるから、自分の世界を形成するうえで必要な事柄を選び出してそれについて思索を行うこととなる。しかも、自分の世界が偏ったものにならないように、関心のない分野にも自分を開いておく必要がある。いわば、一つのことに没入することのない状態を意識して保つということである。携帯電話やパソコンといったものは自分の世界が偏屈にならないために利用する程度で良い、と思うのである。

                                       以上


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